事業再構築_事業再編の概要
こんにちは!川島公認会計士事務所代表の川島です。
今回も引き続き事業再構築指針です。
これまで、事業再構築指針の概要、事業再構築の5つの類型のうち「新分野展開」「業態転換」「業種転換」「事業転換」について概要や事業再構築指針の手引きで公表された事例について確認しました。
今回は、5つ目の類型である「事業再編」について、指針の内容を確認したいと思います。
事業再編については、他の4つと少し毛色が違っており、また事業再編固有の要件等について指針上の情報もあまり充実していないように思えます。そのため、事業再編については公募要領が公表されるまで引き続き言及できることが限られますが、現状の情報からお伝えできそうなことを書いていきたいと思います。
なお、本ブログでは、公表された指針・手引き(合わせて「指針」とします)の内容について、全体像の理解のためになるべく分かりやすい言葉や表現で記載することを趣旨としております。そのため、言葉の正確性や内容の網羅性を担保するものではありませんので、実際の申請に当たっては本指針と今後公表される公募要領等を必ずご確認ください。
また、本ブログは私見を含んでおり、当該私見はその妥当性を保証するものではありませんのでご留意ください。
経済産業省の事業再構築指針・手引きはこちら
事業再編の内容と要件のポイントは?
まず、指針上の事業再編の定義を確認します。
「事業再編とは、会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を行い、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行うことをいう。」
令和3年3月17日 中小企業庁 「事業再構築指針」
このように、事業再編は他の4つの類型と少し異なり、①会社法上の組織再編行為等を行うこと(組織再編要件)、②新分野展開等4つの類型のいずれかを行うこと(その他の事業再構築要件)の両方を満たす必要があるという内容になっています。
そして、定義の中には、「新たな事業形態のもとに」との文言があります。これを素直に解釈すると、「組織再編行為等を行って新たな事業形態になった後に、4つの類型のいずれかを行う」ことを示していると言えます。つまり、順序としては組織再編行為等⇒事業再構築における事業実施という流れになると理解できます。
一見すると当然でしょうと思われるかもしれませんが、ここをしっかり認識しておかないと後の手引き資料の意味と実際の事業再編類型における事業再構築の要件検討のときに、場合によっては混乱する可能性がありそうなのでここで確認しておきたいと思います。
ということで、事業再編を要約すると、上表のマトリクス図のいずれかの箇所に該当する必要があるということですね。
ところで、『事業再編』という文字からM&Aを連想する方は多いと思いますが、実務上、中小・中堅企業において行われているM&Aの形態の多くは被買収会社(売り手)の「株式の取得」です。つまり、売り手の会社の株式を取得して子会社にするM&Aが多いということです。
そして、ここが非常に重要なポイントです。指針で示されている事業再編は、会社法上の組織再編行為等をいい、具体的には上表の5つの行為であると明示されています。つまり、「株式の取得」による子会社化はここでいう組織再編行為等には該当しない、ということになります。
そのため、例えば買い手であるA社が、売り手であるB社の事業領域で事業再構築を行う意図をもってB社の「株式を取得」した場合、「A社として」本補助金の申請を行うことはできない、ということになるかと思います(これは現状の情報を踏まえた私見であり、最終的には公募要領を待つ必要がありますのでご留意ください)。そして、買収されたB社としても、B社として4つの類型のいずれかで事業再構築を行わなければ本補助金の申請をすることはできないと考えられますので、「株式の取得」ではA社の意図は達成されないということになると思います。
もちろん、株式取得後にA社を存続会社とする合併等を行えば組織再編行為等には該当すると思いますが、いずれにせよ組織再編行為等を行う場合は、事業再構築に関わらず検討事項が多く難易度が高くなりますので、事業再編の類型で申請を検討・行われる方は色々とご注意ください。
以上が現状の情報を踏まえた事業再編類型の大きなポイントかと思いますが、②の4つの類型については前回までのブログにて内容を確認してますので、それらを確認したい場合は該当のブログをご覧ください。
以下では、事業再編の類型固有の内容である①について、指針の公表内容を見ていきたいと思います。
組織再編要件の内容とポイントは?
事業再構築指針(手引きではなく指針の方です)を確認すると、事業再編については定義と該当要件のみが記載され、該当要件も上記①組織再編要件と②その他の事業再構築要件の両方に該当することと記載されているのみとなっています。
そして、手引きには指針の内容に加えて以下の資料が加えられているのみとなっています。
この表は、各組織再編行為等ごとに、「それぞれの場合の事業再構築の該当性の判断」とされています。
「それぞれの場合の事業再構築の該当性の判断」、、、判断の後に言葉が続きそうなものですが、よくわかりません(笑)。
組織再編行為等を行う前と後の範囲としてそれぞれ内容が記載されていますが、何のための記載なのか(何の目的で使用するものなのか)が明示されていないため、この資料の位置付けが判断しかねるというところです。
いずれにせよ、事業再編については他の4つの類型に比べ、組織再編行為等があることから要する時間も長くなることも予想され、現状1年程度とされている補助事業期間が事業再編も含めた画一的なものとなるのか、買収・売却が未確定でも採択されるのか等々まだ明らかでない点が多いと思われますので、公募要領の公表が待たれるところです。
(プラスα情報)事業承継・引継ぎ補助金の利用
これまで事業再構築補助金について見てきましたが、本ブログでは事業再編について確認してきました。
事業再編の要件である組織再編行為等はいわゆるM&Aとなり、M&Aを行う際は通常、各種専門家を利用してデューデリジェンスなどのサービスを受けることが多いと思います。そして、それらのサービスには対価が発生しますが、その費用に対して補助が行われることがあります。
それが令和2年度第3次補正予算と令和3年度当初予算に盛り込まれた「事業承継・引継ぎ補助金」です。
内容の詳細はここでは触れませんが、当該補助金では上記のような専門家活用の際の費用の補助や、M&Aを契機とする新たな取り組みや廃業に係る費用の補助なども行われます。ですので、事業再編の類型で事業再構築をお考えの場合は、事業承継・引継ぎ補助金も合わせて上手く活用できないかを検討されるのがよいと思います(補助事業が違えば、異なる補助金の利用も可能です)。
弊所は、M&Aの関連サービスもご提供可能ですので、諸々弊所にご依頼いただければ非常に効率的です!(宣伝です(笑))
なお、本ブログ執筆現在、事業承継・引継ぎ補助金はまだ公募要領が発表されておらず、ちょうど本補助金に係る事業者(事務局みたいなイメージです)が決まったところですので、事業再構築補助金と同様に公募要領の公表を待ちましょう。
ちなみに、事業承継・引継ぎ補助金の事業者は、私かかつて勤めていたデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社になったようです。私が所属していたときはこういった事業はしていなかったと思うのですが、最近はよく補助金等の事業者に名乗りを上げているようですね。余談でした。
まとめ
以上、事業再編について確認してきましたが、事業再編については情報不足が否めないため、公募要領公表前の現状では明らかでない点も多く、もし事業再編を検討されている方がいらっしゃれば事前準備や検討を行うことも難しいところではないかと思います。
間もなく公募要領が発表されるかとは思いますので、発表を待ちつつできる準備を進めておきましょう。
当事務所では事業再構築補助金をはじめ、各種補助金の申請支援を行っております。申請をお考えでサポートが必要な事業者様は、是非当事務所までお気軽にお問い合わせください。
大手監査法人出身の公認会計士・税理士
メルボルンでのバリスタ留学、カミーノ・デ・サンティアゴで780km完歩など、ちょっと変わった経歴を持つ会計士が税務・会計・財務などの専門情報とコーヒーについて発信していきます